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「広がれ 介護タクシー」を読んで

こんにちは!代表の小澤です。

読書が好きな私ですが、仕事に直接かかわる本を読むことは、あまり多くありません。好んで読む本は小説や学術書がほとんど。そんな私もたまには仕事目的で勉強する機会があります。

当社では、月に一度、全社員で集まって研修会とミーティングを行っています。みんなで勉強する機会にということで、会社の歴史を紹介したり、仕事のコツを共有したり、車のメンテナンスを学習したりしています。その際、ネタ作りのために仕事に係る本を読むというわけです。

今回、そのために読んだ本がこちら↓

安宅温さんが書かれた「広がれ介護タクシー 介護移送が拓くバリアフリー社会への道」。介護タクシーをダイレクトに扱った本は、大変に少ないと思われ、事業者からすると大変に貴重な本になります。以下、要約をまとめました。

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本書では、介護保険を使ったタクシーが始まった2000年から、有償運送事業が始まった2003年ごろまでの介護タクシーについて書かれている。

2000年に始まった介護保険では、身体介護30分2100円を適用し、本人負担210円という破格の安さで外出することができるようになった。障害や疾患を負った方の移送を志した通常のタクシー会社が先駆けとなり、ドライバーがケアを行うことが保険適用となり、ドアtoドアからベッドtoベッドを低額で実現できたのだった。

利用者からすると、「心丈夫な乗り物だから」「家族に負担をかけないですむから」という思いがあった。また、在宅の家族から見ると「家族以外の方と接する唯一のチャンス」「コミュニケーションの場」であった。

長らく介護タクシーを取材してきた筆者から見ると介護タクシーの効果は下記のようであった。

「施設にしろ居宅にしろ、閉ざされた空間で介護を受ける人たちにとって、車で外出することは、それだけでも社会参加になるであろう。そして、その外出する日を心待ちにし、少しばかりおしゃれをする気を起こすことで、生きる意欲が促されることは間違いない(p.83)」。

 「施設の中や家の中だけで介護を受け、変化のない生活を続けていると、その姿は好奇心や意欲を失った人のようにさえ見えてしまう。こうして行きたいところへ外出してみると、体は不自由であっても、好奇心や意欲が失われたのではなく、気持ちを押さえ込んで無視せざるをえなかったことがわかる(p.88)」。

まさしく、環境の制約によって、本人の意欲が制約されていたということである。

その本人の意欲を引き出すのが介護タクシーのドライバーである。筆者は、介護タクシーのドライバーのケアが「スマート」「機転が利く」「人間的」とみた。その理由について、「常に介護の場が人前であることによって、手早くスマートな介護をするようになるのだろう(p.96)」「施設の介護職員のように決まった人を介護するのではなく、日々違う状態の、違う個性の人に出会って、介護するということによって順応性が優れて育つのであろう(同)」「介護の場も初めて行く場所も多いから、常に臨機応変に対処することが多いからだろう(同)」と考察している。

それゆえ、介護タクシーのドライバーとして必要な要素は「自己決断力と自己責任をとれる意思」と述べている。

介護保険が始まった時期から、様々な制約が存在していた。例えば「家族の同乗禁止」「二人乗車禁止」「病院から病院への移動の禁止」などである。家族が同乗できるのであれば家族が対応すべき、夫婦同時の利用や病院のはしごは行政処理的に不都合など、現実のニーズを無視した運用が行われていた。

さらに3年後の改定の際に、厚労省と国土交通省はこれまで適応されていた身体介護30分をなくし、通院等乗降介助という項目がつくった。単価は1回1000円であり、本人負担は100円。走行中のタクシー代は本人負担とするということとし、担当できるのは二種免許をもったドライバーのみとした。通常のタクシー事業者との整合性をとろうとしたのだと思われる。

しかし、業者から見ると収入が2分の1となり、保険収入だけでは立ち行かない。また利用者からみれば、もともと210円で利用できていたのが、100円+タクシー代ということになり、負担が増える可能性が出てきた。

そもそも、この段階で、介護タクシーの担い手が地域によって異なっていた。二種免許を取得したタクシー会社だけではなく、市町村の社協やNPO法人、ヘルパー事業所なども介護タクシーを行っていたのである。

行政からの通知も、国と都道府県、市町村で錯綜するなど大混乱し、通院難民が一時的に発生することとなった。こうした混乱を収めるものとして、有償運送事業が生まれた。それは、ドライバーが免許停止を受けていない、交通安全の講習を受けている、対人8千万対物2百万の賠償保険の加入など、一定の条件を満たした業者であれば取得できる資格で、介護保険の適用とともに一定の金額をもらって運送ができるというものであった。

しかし、有償運送はあくまでも業者の現状維持の制度であって、利用者からすれば負担増となる悪手であると筆者は指摘している。また、通院等乗降介助の最大の問題が、運転中の気遣いや観察、介護などを保険上認めなかった点にある。実際にその後の流れを見ると、介護保険を利用する業者は減少し、自費負担が増える結果となっている。

今後、介護タクシーが広がるためには、「公共交通」という理念と、「経済の活性化」という効果を、社会的に広げていく必要があると筆者は指摘している。すなわち、保険上の適用範囲を運転中にまで広げることを、利用者が移動して買い物や社会活動を行うことで経済的効果がある実証をもって、社会を説得していくべきだと考察している。

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ドキュメンタリータッチの本で、直接現場で取材を重ねながら、行政の問題点について考察しています。

介護タクシーの技術や能力、効果などは、現場で働いている私にとっても「まさしく!」とうなずけるものでした。

有償運送事業制度ができた2003年という20年以上昔の話ではありますが、仕事の内容に関しては大きく変わらないと思いました。ただ、介護保険を利用した介護タクシー事業者はほぼいなくなってしまっており(当社も介護保険は適用していません)、介護保険制度は筆者の提案からは完全に逆行してしまったなと悲しく思いました…。

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