三好春樹先生講演会(コミュニケーション)
昨日(1月21日)、三好先生のセミナーに行ってきました!
今回のテーマは「コミュニケーション」。
冒頭で先生は、最近の介護業界での論調として、
コミュニケーションについて間違った理解があると言っていました。
例えば、介護専門の学校を卒業したばかりの新職が、
「お年寄りへの声掛けやコミュニケーションはどう行えばいいのでしょうか」
と質問してきたそうです。
これに対して三好先生は、こう答えたそうです。
「用もないのに声掛けるんじゃない」(笑)
この言葉の裏側には、声掛けをすることは、
介護職員の仕事ではなく、お年寄り同士がすることであって、
職員はそれが出来るように支援することが仕事だという、
三好先生の考え方があります。
また、最近流行りの「傾聴」についても、
「基本的に不自然」と一刀両断。
PTSDへの治療などのように、
患者にとって権威を必要とするような場合には有効かもしれないが、
認知症老人の場合には、一方的な関係をつくってしまい、
双方的で豊かな関係性をつくれなくなってしまうとのこと。
続いて、認知症老人とのコミュニケーションについて、
人間のステージごとに対比しながら話がありました。
ステージと特色をまとめると、
◆赤ちゃんステージ…非言語的表現、依存した存在、快楽原則
◆社会人ステージ…言語的表現、自立した個人、現実原則
◆高齢者ステージ…言語的表現の変化+非言語的表現、依存した存在、快楽原則
となります。
快楽原則とは、「気持がよいか、悪いか」で判断することで、
現実原則とは、「社会的に良いか、悪いか」で判断することだそうです。
見てわかる通り、赤ちゃんと高齢者は同じになっています。
高齢者になると、赤ちゃんの感覚にだんだんと戻っていくというのが、
三好先生の主張です。
もちろん、言語的な表現もありますが、
それも社会人とは異なっていきます。
例えば、夜になると「酒がほしい」と言って騒ぐおじいさんがいた。
施設に酒を置くことはできないし、勝手にあげることも出来ない。
仕方ないので、冷やした水を、「はい、お酒です」と言ってあげてみたところ、
美味しそうにキューっと飲みほして、
「ああうまかった」と言ってぐっすり寝た。
このおじいさんは、本当に欲しがっていたのは冷たい飲み物であって、
必ずしも酒そのものではなかったわけです。
酒は、おじいさんにとって冷たい飲み物の象徴であって、
いわばその「間接喩」「暗喩・隠喩」「メタファー」なのだと。
よく認知症のお年寄りが「家に帰りたい」と言いますが、
実際に家に帰っても落ち着かない場合があるそうです。
これも、家は「居場所」のメタファーなのかもしれない。
自分の落ち着く居場所がないと訴えているのかもしれないのです。
このようなことは認知症だけでなく、統合失調症でも見られるとのことですが、
職員はメタファーを通じて、本当にお年寄りが求めている事を類推して、
対応していく必要があるわけです。
次に、高齢者の非言語的表現について考えられるものは、
「表情」「眼差し」「声のトーン」「身ぶり」「手ぶり」「ふれること」「歌」
などがあげられました。
そして、最も重要なのは認知症の「問題行動」と言われるものです。
これは、快不快の快楽原則から言えば、不快を訴えています。
体の不調が起きている可能性が高いのです。
考えられる体の不調は、
1.便秘
2.脱水
3.発熱
4.慢性疾患の悪化
です。
不穏になったから「声掛け」の前に、
こういった体の不調を介護職は疑ってみる必要があるとのことです。
さらに脱水については、その症状を詳しくあげてくれました。
1.元気がない
2.食欲がない
3.便秘
4.尿量低下
5.微熱
6.皮膚が乾く
最後に、コミュニケーションの最大の目的は「共感」すること。
必ずしも言葉が正しいわけではなく、
言葉が邪魔している可能性もあるので気をつけて!とのことでした。