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気持ちのよい入浴ケア

「いい湯だな」
「いい湯ね」

しばらく前のことになりますが、
お客さんの老夫婦を塩原の温泉にお連れしたときの一言です。

いままで一緒にお風呂に入ったことがなかったそうで、
バリアフリーになっている家族風呂にお二人で入る手伝いをしました。

旦那さんが入院されたり、奥さんが入院されたりで、
何年かぶりの温泉ということでとても気持ちよさそうでした。

日本人には、お風呂に気持ちよく入るということは、
とっても大切なことのように思います。

自分自身、仕事が遅くなって子どもを二人お風呂で洗うときなど、
カラスの行水のようにスピード勝負になりますが、
ちょっとでも一人で湯船につかると溜息と一緒に疲れが抜けていく気がします。


今回読んだ「新しい介護学 生活づくりの入浴ケア」では、
「お年寄りが要介護になっても、いかにして気持ちよく入浴してもらうか」がテーマになっています。

以前の「生活づくりの排泄ケア」では、「気持ちよく排泄」ということがテーマでした。
介護においては、「気持ちよさ」というのはとても大切なことなんですね。
とくに、認知症の方の場合では、「快・不快の原則」と言われることがありまして、
気持ちよければ受け入れるし、気持ち悪かったら拒絶するものです。

さて、今回の本でやり玉にあげられている介護があり、
それは「機械浴槽」です。

医療や介護を仕事とされている方はご存知だと思いますが、
ストレッチャーに乗ったままや車いすに乗ったまま、
機械に入って、その中にお湯がどーっと入ってくる湯船です。

私は経験ないのですが、健康な人が体験してみても、
このお風呂は怖いものだそうです。
足が浮力で浮いてしまい、逆に頭は沈み込む感覚。
そのため、ストレッチャーの取っ手にぐっと力を入れなければならない。
寝たまま入っているから楽かと思われるかもしれないが、全く楽ではない。

-だいたいリラックスできない状態ではお風呂に入っているとはいえないどころか「人体洗浄」のようなものです。―

とは著者の言葉です。
確かに、キレイにすることだけが目的であれば人体洗浄に違いありません。
しかし、介護が目指すのは違うはずです。
本人が「やってもらってよかった」と思えて、
介護者も「やってよかった」と思えるような入浴であるべきです。

本書で著者たちが勧める入浴ケアの方法は、下記のようにまとめられると思います。

◆分業化しない
連れてくる人、服を脱がせる人、洗う人、見守る人、服を着せる人―というような分業をしない。
お年寄りはベルトコベアに乗せられたモノではない。
お風呂から出た後、「不良在庫」のように震えて待っている人が出たりする。
やっている側もずっと同じ作業をしていて面白くないし、自分だからこそ出来るというやりがいも感じられない。
◎すべての過程を一対一で行う
連れてきて、服を脱がせて―という一連の過程を全て一対一で行う。
「いいお湯だから」と誘って、脱衣所で服を脱がせて、一緒にお風呂場に入って洗って、
湯上りには身体を拭いて、ヘアドライヤーをかけて、櫛で髪を梳かして、
水分をとってもらって、「きれいになってよかったね!」と声をかけて、部屋まで連れて帰る。
それから次の人を誘いに行く。

◆機械浴を使わない
本当に寝たきりになって体が硬直したりしていない限り、機械浴は必要ない。
機械浴は怖いし、気持ちよくない。
生活が生き生きとしてこない。
◎普通浴槽(個浴)を使って入浴する
介助する側にも負担にならないで、普通浴槽で入浴してもらうことは十分に可能。
(詳しく知りたい方は本書を読んでみてください!)
とくに、お年寄りの体に合わせた半埋め込み型の浴槽と、体のバランスを把握した介護技術があれば、
浮力を利用することで、特殊な人以外ほぼすべての方の普通浴槽での入浴が可能。

◆昔の感覚を活かす
比較的最近普及したものはあまり得意ではないかもしれない。
たとえばシャワーがいやな方がいたら、掛け湯で体を洗ってきた方かもしれない。
ボディシャンプーではなく石鹸かもしれない。
しっかりと今までの暮らしぶりをアセスメント(情報収集)したうえで、ケア方法を選択し、
ご本人が出来ることはご本人に行っていただく。

こうしてみると、介護には分業が似合っていないと感じます。
ケアする人の、その場その場の感覚と工夫で勝負する世界だと思います。
それは、ケアする相手の方の習慣や好みが、多種多様だからです。

ベルトコンベヤーの例で言えば、「T型フォード」をみんなが買う時代であれば、
それをつくるためにありだったのかもしれません。
ただし、好みが多様化した多品種少量生産では、
「セル生産方式」と言われる、一人の職人がはじめから最後まで作り上げていく方が生産性も高いと言われます。

介護では、多様な個性の可能性がある中で、その一人のためにケアするわけですから、
一対一が最もよいケアの方法ということになるのも納得です。

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