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抗認知症薬について(副作用編)

だんだんと温かい日が増えてきましたね。
梅の花がきれいに咲き始めました。
春が近づいているな、と感じます。

さて、今日は先日行った認知症の薬に関するセミナーの内容をお伝えしたいと思います。
2018年2月24日(土)に埼玉会館にて行われたもので、
タイトルは「認知症ケアが上達する薬の知識」。

講演者は東田勉さんというフリーライターで、介護の三好春樹さんや医師の河野和彦さんなど、
とても著名な方のゴーストライターも務められています。

講演内容は6時間に及んだので、すべてをお伝えするのは難しいです。
しかし、ポイントを絞ってお伝えすると2点に絞られます。

①抗認知症薬(アリセプト、メマリー、レミニール、リバスチグミン)の副作用の恐ろしさ
②抗認知症薬の少量投与の重要性

かなりインパクトの強い内容でしたので、二度にわたって載せていきます。

一回目は、「①抗認知症薬の副作用の恐ろしさ」
二回目は、「②抗認知症薬の少量投与の重要性」についてです。

ということで、今回は①認知症薬の副作用の恐ろしさについてお伝えします。

東田さんのお話の結論から言うと、
「抗認知症薬を飲み始めて1年以上たって、
 急に歩行障害や嚥下障害が起こった方は、すぐに抗認知症薬の服薬を中止すべき」
ということでした。

どうしてこのような結論になるのか。
お話を整理すると、下記のようになると思います。
1.認知症の種類
2.抗認知症薬とは何か
3.副作用の種類と理由
一つずつ追って説明していきたいと思います。

1.認知症の種類

この辺りは、介護をお仕事にされている方は詳しいとは思いますが、
改めてセミナーの内容をお伝えさせて頂きます。

ご存知のように、「認知症」という病名はありません。
それは「がん」という病名がないのと同じように。

どの部位が悪くなっているのか、特定されて初めて病名が出ます。
がんで言えば、前立腺がんや大腸がん、胃がんなどのようにです。

認知症においても、これまでに明らかになった原因に基づいて、
さまざまな病名がつけられています。

四大認知症といわれるのは
「①アルツハイマー型認知症(67.60%) ②脳血管性認知症(19.50%) ③レビー小体型認知症(4.30%) ④前頭側頭型認知症(1%)」
です。(%は2013年厚労省研究班による発表)

それぞれの原因と症状はホームページで調べられるので、
ぜひご覧になっていただくとして、興味深いのは次の事実です。

すなわち、厚労省の発表と認知症専門医が出した疾患患者の割合が異なっている。

次の機会に書こうと思っている「コウノメソッド」で有名な河野和彦医師の分類では、
①アルツハイマー型認知症(44%) ②レビー小体型認知症(22%) ③前頭側頭型認知症(1%) ④脳血管性認知症(10%)
となっており、アルツハイマー型と脳血管性認知症の割合は明らかに小さくなっています。

また、ある認知症専門の開業医では
①レビー小体型認知症(44%) ②レビー・ピック複合型(24%) ③前頭側頭型認知症(16%) ④アルツハイマー型認知症(11%) ⑤脳血管性認知症(10%)
となっています。
この医師はレビー小体が得意という評判もあるようですが、それにしても厚労省とは差があります。

厚労省のデータは、これまでのレセプトを合計したりして出した数値でしょう。
これと認知症を得意とする医師が出す割合に大きな違いがあるのはなぜか。

東田さんは、その原因について「誤診」の問題があると仰っていました。
すなわち、認知症と一括りにするのではなく、どの種類の認知症であるのか、
しっかりと診断を下せる医師が少ない問題がある、と。

当たり前ですが、胃がんの人に前立腺がんの治療薬を使っても、効果がありません。
同じように、認知症においても、病気の種類によって、治療の仕方や処方の仕方は異なるわけです。

正しく診断できないとなると、誤処方が増えます。
結果、効果は見られず副作用が現れるなどの薬害が増えてしまうわけです。

また、認知症の種類も、正しく診断するのはとても難しいようです。
なぜなら、認知症は合併や移行がとても多いからです。

一時期、アルツハイマー型と診断されても、レビー型へと移行する。
もしくは、レビー型のみからピック型も合併する。
そういうことが年を重ねるごとに増えてくるそうです。

それを見極めながら治療しなければなりませんが、
現状はそういった診断を下せる医師が少なすぎるとのことでした。

2.抗認知症薬とは何か

続いて、認知症の薬についてお伝えします。
認知症の薬は、症状によって使う薬を大きく二つに分けることが出来ます。

一つ目が、今回話題にしている「抗認知症薬」と言われるもので、
認知症の中核症状(記憶障害、見当識障害など)に効果があるといわれています。

現在、抗認知症薬で認可されている薬は四つで、
アリセプト、レミニール、リバスチグミン、メマリーです。

二つ目が、行動心理症状(=BPSD、徘徊や幻覚幻聴、不眠など)を抑えるための薬で、
向精神薬と言われるものです。

向精神薬には、抗精神病薬や抗うつ薬、精神安定剤、睡眠剤などが含まれ、
主におとなしくなる効果があります。

向精神薬は今回のメインの話ではありませんでしたが、
日本ではこの薬の処方についても非常に大きな問題と東田さんは話されていました。
例えば抗精神病薬を併用させる医師が多いが、それは国際的に非難されていることで、
その非難のトーンは鯨を殺すのと同じぐらいのトーンらしいです。
日本のメディアは、製薬会社が重要な顧客のため、それを報じることはないとのことでしたが…。

さて、抗認知症薬について話を戻しますと、認知症の中核症状に用いられるのがこの薬です。
抗認知症薬のポイントは3つで、①興奮系の薬が多い、②用量規定が存在する、③治すことはできないという話です。

まず、抗認知症薬は興奮系の薬が多いそうです。
メマリーを除く、アリセプトとリバスチグミン、レミニールはいずれも興奮系の薬です。

認知症の周辺症状は大きく陽性と陰性の二つに分けられ、
陽性は興奮気味(徘徊や暴力・暴言など)、陰性は抑制気味(無気力やうつ状態など)の症状とされます。

ですので、抗認知症薬を陽性(興奮気味)の人に与えると、大変なことになります。
ただでさえ大変な周辺症状が、さらに重くなってしまうわけです。

認知症に詳しくない医師は、
それを抑えるために、抗精神病薬(おとなしくする薬)を使おうとします。
それは、処方の仕方として、アクセルとブレーキを両方踏んでいるような状態とも言え、
大変に危険であり、本人にも負担がかかります。

結果、おとなしくなるところまでおとなしくさせられ、
食欲が減退したりトイレに行けなくなったりして、
家族では見切れない、施設へ預けようという話になってしまうのです。

次に、抗認知症薬には用量規定というものが存在します。
これは製薬会社が設定した服薬用量の決まりで、どんどん服薬量を増やしていきます。
医師はこの用量に合わせて処方しなければなりません。

アリセプトは3mgからはじまって、5㎎が規定量、足りなければ10㎎まで3週間から7週間で増やしていきます。
リバスチグミンは4.5㎎からはじまって、9㎎→13.5㎎→18㎎が規定量で、12週間で増やすます。
レミニールは8㎎からはじまって、16㎎が規定量、足りなければ24㎎まで4週間から8週間で増やしていきます。
メマリーは5㎎からはじまって、10㎎→15㎎→20㎎が規定量で、3週間で増やします。

不思議というか、おかしな話ですが、この間に患者に変化があっても、
基本的に医師は製薬会社の用量規定に合わせて処方しなければならない決まりになっているそうです。

先ほど、興奮系の薬剤という話を書きましたが、その症状の一つに易怒というものがあります。
病的な怒りっぽさで、人が変わったように怒りっぽくなってしまう症状です。

それは実は薬が効いている、効きすぎている可能性があるわけですが、
医師はそれを聞いても基本的には増量します。
それが決まりだからです。

増量しつつ、向精神薬を処方します。
おとなしくさせるためです。

精神科と神経内科のドクターは、薬は効き目が表れるまで処方するように教育を受けているそうです。
完全におとなしくなるまで出すわけです。
こうなると廃人にさせられてしまう、と東田さんは危惧されていました。

アリセプト以降、用量規定はずっと続いていて、
これを守らない限り診療報酬が出ないことになっていました。
しかい、これに反対する医師団体等の要望によって、
2016年6月1日に条件付きで医師が処方量を調節することが可能となりました。

しかし、これは全国紙には載らず、地方紙にしか載ることはありませんでした。
時事通信社が発信したのを地方紙が載せただけで、
全国紙はいわゆる「忖度」をしたわけです。

そのため、患者も医師も、このことを知らない人が多いそうです。

最後に、抗認知症薬は認知症自体を治すことは出来ず、遅らせることしかできない、
しかも効き目は10か月しかないということについてです。

一番最初の抗認知症薬は有名なアリセプトです。
この薬を開発したのは、長谷川和夫先生です。

アリセプトが世に出て間もないころ、
医学雑誌には長谷川先生の写真入りの広告が載ったそうです。
そこにはこのような説明が書かれていました。

「初期ないし中期に効果的で、認知症の進行を遅らせることができます。
しかし、原因をなくすことはできません。」

「普通アルツハイマー病にかかると、認知機能は一方的に低下していきますが、
アリセプトを服用するとその進行が抑えられて、その状態が10か月ほど続きます。
そして、それ以降は自然の経過に並行して悪くなっていきます。

開発者の長谷川先生でさえ、治すことはできない、効き目は10か月と仰っているわけです。
しかも、効かない人もいる。

この後に述べる副作用を考えたとき、
どこまでこの薬を使うべきか、確かに考えなければならないと思います。

3.副作用の種類と理由

抗認知症薬を処方し、実際にその患者がどのような経過をたどったか、
しっかりと記録をとっている先生をセミナーでは紹介されていました。

そのお一人が、川越にある池袋病院の副院長をされている平川先生という医師です。

平川先生のとったデータによると、
作用と副作用が両方みられたそうです。

作用は、覚醒(意識向上)と元気(記憶向上)。
副作用は、嘔吐(食欲低下、誤嚥)、易怒(興奮)、歩行障害、めまい・ふらつき、眠気、頻尿、胃潰瘍、徐脈・心停止とのことでした。

とくに、アリセプトの服用者には食欲不振と易怒、歩行障害がよく見られ、
レミニールの服用者には食欲低下がよくみられたとのことでした。

アリセプトの説明書にも、食欲不振と歩行障害が副作用としてありうるとされていますが、
その比率は0.02%程度となっていました。

しかし、平川先生の統計では、20~30%の人には症状が出たとのことで、
製薬会社の説明とは大きな違いがあるとのことです。

しかも、半年から1年後に急に起こるそうです。
急に食べられなくなった、急に歩けなくなったという方で、1年以上服薬している人は要注意です。

これが起きるメカニズムについては、
アセチルコリンとドーパミンの脳内バランスの問題が原因とのことでした。

アセチルコリンとは、記憶に関与する脳内物質で、
ドーパミンは意欲や動作性に関与する脳内物質です。

アリセプトなどの抗認知症薬でアセチルコリンを増やそうとすると、
ドーパミンの相対的不足が起こり、動作性の悪化が歩行障害や嚥下障害をまねくとのことでした。

そのためアリセプトが原因で歩行障害になった人は、整形外科に行っても絶対に治らない。
アリセプトの服用をやめない限り、絶対に治らないと東田さんは力説されていました。

また、食欲不振に関しても、アリセプトの服用を中止しただけで、
元気になった人がたくさんいるとのこと。

メマリーに関しては、めまい・ふらつきと眠気がすごいため、危険な転倒をするとのことでした。
確かに、転倒して大腿骨を折られた私の知っている方は、メマリーを服用していました…。

メマリーは他の抗認知症薬と併用できますが、併用するとすべての副作用がそろうことになり、
何が問題でこの人はこんな状態になってしまったのか訳が分からなくなってしまう危険性があると仰っていました。

これほどひどい副作用があるんだったら、物忘れぐらいどうでもよかったという話にならないでしょうか、
しかも10か月しか効かないんですからと東田さんは仰っていました。

さて、これまでの話をまとめます。

「1.認知症の種類について」
・認知症の種類によって治療や処方の仕方が全く異なる
・その診断が正しくできる医師が少ない
・その結果、誤診が増え、誤薬が増える

「2.抗認知症薬とは何か」
・興奮系の薬が多く、陽性(興奮している)症状の人にいきなり使ってはならない
・用量規定を守ると易怒が出やすく、それを抑えるために抗精神病薬を使う医師が多い
・認知症を治すことはできず、10か月しか効き目がない

「3.副作用とその原因について」
・抗認知症薬を服用すると、歩行障害や嚥下障害といった副作用が半年から一年後、急に発生する
・その原因は抗認知症薬によるアセチルコリンの無理な増加がドーパミンの作用を阻害するため
・服用が原因の場合、服用を中止しない限り症状は改善しない

お年寄りが歩行障害や嚥下障害になった場合で、1年以上抗認知症薬を服薬している場合、
・すでに効果の10か月が過ぎている
・やめない限り改善しない
といった理由で、
「抗認知症薬を飲み始めて1年以上たって、
 急に歩行障害や嚥下障害が起こった方は、すぐに抗認知症薬の服薬を中止すべき」

という話になるわけです。

すぐに介護職が現場で実践できる方法として、
分かりやすく東田さんが伝えてくれたメッセージでした。

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