道具をつかう
腰痛に悩んでいる方。
・病院に行く
・整骨院に行く
・シップを貼る
・ストレッチをする
・運動をする
さまざまな方法をお試しと思います。
私自身も、訪問介護時代、入浴介助の際にギックリ腰をやってから、
慢性的な腰痛にずっと苦しんできました。
ひどくなると、腰だけではなく、足のしびれや頭痛など、
他の部分にも悪影響が出ます。
お年寄りでも、腰痛を訴える方は多くいます。
あまりにも多いので、大体の場合は「年だから仕方ない」と、
本人もまわりも諦めます。
しかし―
「道具を使う」
これを試していないことが多いと思いますが、いかがでしょう?
少なくとも、私はそうでした。
先日、「寝かせきりにしない! 「座り」ケアの実践」という本を読みました。
病気や介護が必要になった方々に、
いかにラクに座ってもらうかということを追及している本です。
人体の構造から、疾患別の座りで出やすい症状の特徴、
座りに関する歴史に至るまで、座ることとはどういうことか解き明かしています。
腰痛が起きる最大の原因は、
「骨盤の後傾にある」
というのが本書の結論でした。
本来、人の骨盤はS字カーブを描きます。
骨盤が倒れると、人の背骨である脊柱はC字カーブを描くようになります。
そうすると、S字カーブだったときに、
まっすぐ下に落ちていくはずの頭の重さが、
C字カーブになると一部の腰に重さが落ちるようになるわけです。
これによって腰の一部の筋肉に負担がかかり痛みます。
一部の筋肉が痛むと、それをかばうようにして他の筋肉もこわばります。
そうして腰全体に痛みが出てしまうのでしょう。
つまり、肝心なのは、いかにして骨盤を後傾させないようにするかです。
骨盤を後傾させないように、自分自身がいい姿勢をしようとして、
背筋をピッとするのはいいですが、ずっとやっていると疲れてきます。
C字カーブを描きたくなります。
それを防ぐためのもう一つのポイントが、S字カーブを維持しつつ、
しっかりと背中を預けることが出来るようにすることです。
本書で触れられていた内容ですが、
「からだと環境が広く適切に接していると、
中枢神経はリラックスして筋をゆるめることができます。」
つまり、腰痛を防ぐために大事なのは、骨盤を後傾させないようにしながら、
しっかりと背中や腰を預けられるようにすることです。
個々人で体格や骨格が違う中、
一般的な椅子が合うとは限りません。
しかし、椅子のレベルから探すとなると、
労力もかかりますし、お金もかかります。
そこで、「道具を使う」ということのメリットが大きいのです。
この本を読んで、まずは自分自身で実践してみようと決意。
私は運転する時間が長く、そのことで腰痛がひどくなる傾向がありました。
そこで車の運転席に合った道具として、
カー用品店で「骨盤を立てる」ことを謳っているクッションを買いました。
すると、骨盤が立つと同時に、運転席自体にあった背もたれのラインが、
ちょうどS字カーブに近い形をつくってくれるようになりました。
最初は違和感がありましたが、
慣れるとひどい腰痛が出なくなりました。
次に、私の妻でも試してみてもらいました。
コロナ禍で在宅勤務が増えている中、
彼女は食事用の椅子を使って仕事をしていました。
しかし、終日そこに座って仕事をしていると、
私が夕方帰宅すると、「腰が痛い」「首が痛い」と言っていました。
本書では、座面が合っていないで骨盤が後傾する例として、
背もたれから腰が離れてしまっていることが挙げられていました。
しっかり深く腰掛けても、妻の場合、確かに背もたれに届いていません。
そこで、その間に挟めるようなクッションを、
またカー用品店で買ってみました。
S字カーブを意識したつくりになっています。
すると、その日からひどい腰痛や首の痛みが出なくなったと妻は言うのです。
驚くとともに、このことで私も道具を使う大切さを強く認識しました。
それ以降、購入はしていたものの、あまり活用してこなかった、
背もたれのクッションを、腰痛を訴えるお客さんに試してもらったりしてきました。
円背の方は、S字カーブはできなくなりますが、
重さを分散させるような三角形。
とくに円背の方は、かなり大きな違いを感じて頂けて、
痛みも和らぐことが多いようでした。
以降、仕事をしている中で、腰痛を感じても、
椅子や車いすなどに工夫をしようとしている方は少ないことに気づきました。
本書の著者のお一人、光野有次さんのシーティングの講習会に参加した時に、
「メガネの調整の大切さは皆分かっているが、
車いすの調整もそれと同じぐらい大切なこと。」
「道具をきちんと使うことをもっとやってみてほしい」
と仰っていたことを思い出しました。
周囲に腰痛で悩んでいる方がいれば、
道具を使って椅子に工夫をしてみることをお勧めします。
ぜひ試してみてください。