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【読書録】「ケースワークの原則」

【読書録 「ケースワークの原則」、バイステック著、尾崎新ほか訳、誠信書房、1996年、原著1957年】

福祉業界の古典と言われる書籍です。社内研修のため、読みました。

ケースワークとは「ソーシャルケースワーク」の略で、心理や社会的問題を持つ人々を援助する一つの技法。

その担い手がケースワーカーで、主に3つ、必要な素質があります。
A.人間や社会のことを良く知っていること。
B.課題解決のために地域の資源を動員できること。
C.専門的な対人関係を構築できること。

C.の「専門的な対人関係」が「援助関係」であり、それはケースワークの魂であり、援助それ自体に生命と活力を与え、人間の尊厳を体現させ、ケースワーカー自身を成長させるものといいます。

本書では、ケースワーカーが自身のクライエントと、「援助関係」を良好に構築するため原則が7つ、述べられています。

列挙してみます。

原則1.クライエントを個人として捉える。
原則2.クライエントの感情表現を大切にする。
原則3.援助者は自分の感情を自覚して吟味する。
原則4.受け止める。
原則5.クライエントを一方的に非難しない。
原則6.クライエントの自己決定を促して尊重する。
原則7.秘密を保持して信頼感を醸成する。

重複する内容もありますが、これらは、クライエントの基本的なニーズから生じていると指摘されています。身体的、情緒的、知的、社会的、精神的なニーズであり、困難を抱えたクライエントは、一層ニーズが痛切なものとなる。それゆえ、基本的権利や欲求が侵害されることに大変敏感に反応することになると。

援助関係が構築されるとは、人間関係ですから、当然、一方的なものではなく、クライエントとケースワーカーの相互作用によります。

最初に、クライエントがケースワーカーに対して、「一人の個人として扱ってくれるか(原則1)」「一方的に非難しないか(原則5)」「強制されないか(原則6)」「秘密を暴かれないか(原則7)」を確認します。

次に、ケースワーカーがクライエントに対し、「感情表現を大切にする(原則2)」「自身の感情を自覚して吟味する(原則3)」「「受けとめる(原則4)」という態度を示します。これらは、上記の原則1、5、6、7を尊重することにつながっています。

そして、クライエントはケースワーカーのこうした態度に気付き、伝え返す。これらの繰り返しの中で、良好な援助関係は構築されると。

大変に説得力のある、また実践的な原則と思いました。

また、最後尾に近いところの著者の一言も、大変に胸に響きました。現実を解決する能力を失っても、理想と信念を失っても、福祉の仕事は意義も面白みもなくなるのです。

「現実主義者としてのケースワーカーは、クライエントの人生が持っている厳しい現実、またときには嫌悪の情を持つような醜い現実を、目をそらさずに見つめ理解し、そして援助するよう期待される。一方、理想主義者としてのケースワーカーは、ある場合には、自分がかけがえのない人間であるという信念を失ったクライエントの尊厳と価値を、具体的に発見し、認識するよう期待されている。」(p.216)

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